日本循環器学会/日本高血圧学会/日本心臓病学会合同ガイドライン (2012‒2013年度合同研究班報告)
【ダイジェスト版】より抜粋
2014年版 災害時循環器疾患の予防・管理に関するガイドライン1. 災害・震災後の被災者は40歳以上であれば避難方法, 避難場所などに関係なく DVT・肺塞栓症を発症しや すい.さらに震源地近くおよび津波浸水地域の避難 所など,厳しい環境の避難所で DVT が多い.
2. 女性,車中泊,外傷,トイレを我慢するなどが,DVT 発症の危険因子である.
3. 車中泊では 2 日以上の連泊は危険であるが,1 泊で も肺塞栓症を発症することがある.
1. 避難所生活,とくに雑魚寝の床生活の避難所では 1〜2 週間後の発症が最も多く,注意が必要である. したがって避難所では,1 週間以内に簡易ベッドの 準備が必要である.
2. 雑魚寝,床生活の避難所では,飲水指導・運動指導な どでは DVT を予防できないことから,こうした避難 所における 1 週間以上の避難生活では,
弾性ストッ キング着用による予防が必要である.また避難所で は入院時と同じように可能であれば 24 時間の着用 が望ましい.
3. 上記の震災(災害)後 DVT および肺塞栓症の危険因 子を複数有している被災者,厳しい環境の避難所に いる被災者,長期間雑魚寝生活を強いられている被 ク災者などには,積極的に下腿の下肢静脈エコーと可 能な限り採血による D ダイマー値測定による検診が 必要である.DVT は大腿部・鼠径部にも発生するが, D ダイマー高値でスクリーニングすることが可能で ある.[廣岡らが行った福島県から山形市へ遠隔避難 した被災者の検診では,大腿部まで検査していたが, 大腿静脈の血栓はほとんどなかった(DVT 14 例中 1 例のみ)50).さらに新潟県中越地震から東日本大震 災まで,下腿静脈のみの検査で問題がなかったことか ら,D ダイマー値を POCT(Point-of-Care Testing: ポイント・オブ・ケア検査)で迅速診断できれば必 ずしも大腿部まで検査しなくてもよいと考えられ る.]